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2014-07-18

フランス農業調査1日目

s-s-DSC043367月16日(水)、今日からはフランス・パリ市を中心にフランス国内の農業について調査します。ガイドからはフランスは治安が悪くスリや置き引きに注意するよう再三のアナウンス。観光を売り物にする国にとってはマイナスこの上ない状況のようです。

最初の訪問先となった、イル・ド・フランス圏農業会議所では、フランス国内の農業事情全般にわたって説明を受けました。

約2時間にわたって担当していただいた、エリス・シモンさんからフランスが取ってきた農業政策の歴史とEU連合での農業の課題、農業政策が決定するまでの国内の機関、農業会議所の役割などについて説明がありました。

フランス国内の農業生産額は6兆ユーロを超えるヨーロッパ最大の農業国、農家戸数51万5千戸、農家人口100万人、農地2700万ha、平均耕作面積55haであり、そのうち55%が家族経営で農地も自己所有、農地を借りた形態併せて84%が個人、会社経営は16%だが、増加傾向にあるとのこと。しかし、パリ近郊では56万6千haの農地のうち、毎年2000ha程度の農地が都市化により宅地などに転換され問題となっている。

s-s-DSC04351農業会議所は、こういった土地の問題や所得保障の基準額など国が進める農業政策の諮問機関として農業に関する指導、教育、統計、融資、共済保険など幅広い分野を受け持つ公共機関である。

ルイ・ド・フランス圏は、首都パリを中心に7県を管轄し、都市型の農政の課題を中心に政策提言しています。運営は税金のほか農家の負担金からなり、会議所の決定機関は会議所議員により決定します。パリ圏は46人で農業団体などから選出されています。

フランスは地方分権が進んでおり、地方からの政策提言が国の政策を決定する仕組みが農業の分野では確立されていました。

スタッフも規定により定められており、農家戸数3000戸に対して70人が技術的指導などに当たっています。

戦後(1962年)のフランスでは6の国(フランス、ドイツ、オランダ、スペイン、イタリア、ベルギー)により連携・補完した生産・流通により市場、価格の安定化を図ってきた経緯があり、補償や保険制度が確立しました。1992年のガット・ウルグァィラウンドにおいても価格下落対策として補償金政策がとられ、2003年の農政改革で生産調整と直接補償による農業政策が確立しました。

補償積算には、生産物の品質や数量の基準を取り入れ、レベルを高めるための条件を設定し、ゴミや糞尿処理など環境対策も基準化し補償価格を決定しています。このことは、農家の意識やレベルの向上にはつながっているものの、国民からの理解が難しく当初フランス国家予算の44%をしめていましたが、現在37%で予算は減少し続けているようです。さらに、EU15カ国の水準の決定に格差があり、特に環境に対する意識の違いが問題となっているそうです。今後もこの政策をなくすことはなく、続けていくとのことですが、フランス国内農家がほとんど黒字であることなどから、他の政策との比較で予算の減少が危惧されています。

 

午後は、パリ郊外で野菜生産している農家、山下農園を訪問しました。

s-s-IMG_0937山下朝史氏は日本を出て現在26年目、最初は盆栽を取り扱っていたが盗難に遭って、そこから野菜作りに転校した経歴を持つ。

野菜作りは、全くの素人からであり、当初は順調にはいかず、10年たってやっと成功したという。野菜作りを始めてから18年が経過した今では、パリ市内の三つ星レストラン6カ所に限定して日本野菜を提供している。

しかし、耕地面積は農業とは認められる規模でないことから事業収入での税申告となっているそうだ。敷地は宅地約7000㎡に住宅兼週末営業のレストラン、農地として活用しているのは実に3500㎡しかない。

山下氏の野菜はフランス料理店の頂点といえるパリ市内6店舗と契約し、提供する野菜はすべて買い取ってもらっている。いわゆる無駄はなく、全量出荷している。

日本の種を主に使って年間50種の野菜を栽培しているが、日本野菜の味にこだわっていて、舌の肥えたシェフや客から絶賛されているという。

山下氏は、最高の味である日本野菜と、最高の料理であるフランス料理が融合することで、日本野菜の評価を高めたいとして取り組んでいる。

s-s-IMG_0926日本の農業政策に対しては、大量生産も重要なこととした上で、農業を強くするということは大きくすることではなく、少量でも味にこだわるべきではと警鐘を鳴らしている。

さらに、日本農業、特に北海道農業はすでに大規模すぎる、大量生産は味が落ちるとして、細分化した方が力強さが出るのではと提案した。

一般的に農業は畑の活用を中心に考え、毎年畑で何を生産し、いくら儲けるかを、輪作体系などを工夫してやるものとされているが、山下氏は畑ががんばるのではなく、作る野菜ががんばれる畑を作る必要があるという。

そうして、まずくなるようなことをしない、無理な作付けはしない、旬を守って収穫し、おいしいうちに食べることと話を締めくくった。

今月、パリ市内の三つ星レストラン「ピエール・ガニエ」で山下野菜だけを使ったメニューを提供しているらしい、山下氏は農家というより野菜職人といった感じであった。

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