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2014-07-22

フランス農業調査2・3日目

s-IMG_09757月17日(木)午前には、パリ市内にあるフランス農民組合全国連合を訪問した。
クロード・ステ氏が出迎えてくれ、説明していただいた。ステ氏は農業政策を担当していて我々の目的にぴったりの担当者となった。
全国連合組織には2万の地方の組織がある、県レベルで85、州ごとではないが、さらに32の地域特性に合わせての集合体の頂点が全国連合であり、公的機関として認められている。
運営費は農業従事者が3/1と農業システムの販売益や教育システムでの収入と各事業に対する国の補助である。
役割は社会的ステータスの向上、地方組織の要望調整と国に対する意見反映である。

s-DSC01670国の政策決定へ強く関わる団体となっている。さらに、地方組織へのアドバイスと経営コンサルタント的な仕事も担っている。
地方からの代表で組織され、69人の代表から組織されているが若手、女性、地主、小作、OBなどから割合に応じた人数配分で構成されている。
全国連合は金融には関わらず、金融は地方組織が独自に担っている。ここは、日本と違うところである。
職員は110人そのうち15人が管理職である。
代表や理事、職員は国の全国農民会議やWTO対策などの委員にもなっている。
地方からの意見は調整し国に意見反映するが、国に対しては専門家の意見として委員会に参加している。

しかし、すべてが思い通りにいくわけではないという。
フランスの課題も、農地の問題と農業従事者の問題で日本農業と同様である。
しかし、この全国組織が農家の立場を高め、政府に大きく影響していることは間違いないようである。長い歴史の中で、青年組織等を独立したことなど、この組織が大きな力にならないように誘導しているが、青年組織も同様に地方組織と全国組織で意見集約しながら、活動している。また、戦うときはしっかり戦うという、1992年のシャンゼリゼ通りを埋め尽くすほどの集会を開催したこともある。フランスも農業と政治は強く関わっている。

日本の農業政策の一部はフランス農政策を参考としているといわれている。
所得補償制度などがそうだった。また、フランスでは農地は企業には売ることはできない。売買には計画提出が義務づけられ、厳しい審査がある。農業を守ることが当然であるという国民性が強く感じられた。

s-IMG_1018午後も、市内にある青年農業協会を訪問した。
午前にも話題となった青年組織の全国組織である。
担当していただいたのは、農業経済担当のイアン氏である。
午前に訪問したフランス農民組合全国連合から、1957年ごろから組織活動が活発化していった。1970年には若い農業者への支援システムが決定したように組織の意見を聞きいれ農業政策が図られるようになり、2005年に独立し正式に公的機関となった。
地方組織は2800、22州の95県全てにあり、組合員は50000人に及ぶ。
パリにある本部の職員は30名、各州・各県の組織に1から2名の職員が運営している。
この組織の目的は、第1に若い農業人を職業人として確立させること。
第2に施設整備や機械購入への支援、第3に農業の魅力を発信したイメージアップ、第4に世代交代がスムーズに移行することとしている。
若い農業者の支援システムについてだが、後継者や新規就農者への援助金制度が確立されている。
援助金は耕作に充てる土地の形状や状況により、年間8000ユーロから35900ユーロに段階的に5年間支給され、さらに足りない場合は最長15年返済での貸し付けも受けることが出来る。
ほぼ100%の後継者や新規就農者がこの支援を受けているという。
この財源に充てる資金は、会員からの会費約10%、ヨーロッパ全体やフランス国内の各種団体からの交付金約10%、国からは80%だが国は農業者が支払う税金から支出している。
さらに、専門家の指導者が2名ついて対応してくれるなど制度は充実している。
この指導制度の認定は国や県が認可し、後継者でさほど指導が必要でない場合であっても最低21時間は義務づけられている。

この制度を活用する新規就農者は年間5000人、世代交代で後継者になる率は60%、つまり3人退職し、2人新規就農していることとなる。制度が充実しているにもかかわらず年間フランス全体で2000もの経営体が減少している。農業の意義や魅力をさらに発信していくことが課題となっている。この問題は日本にも共通する課題であり、ここまで充実した制度があるから農家戸数の減少がこの程度となっているとも言える。青年組織の確立から青年層の意識を高めることや後継者や新規就農者への手厚い支援、さらにその実行を青年組織が担うなど日本の農業者の減少対策に取り入れることなど北海道から国に提言していくことも必要ではないかと感じた。

s-IMG_11207月18日(金)はEU調査の最終日。
早朝パリ市内を出発し、南に13kmのランジス市場を調査しました。
フランスでは戦後の人口増加に対応するため、食材毎に各地域に点在していた市場をこのランジス市場に統合した。
魚貝など海産物から野菜、肉など農産物まで全てが集中しており、全体では世界一の規模であり、金融機関なども含め約1200社が参入している。
仲買以外は入場できない完全に専門家だけが利用する市場でり、自ずとレベルが高く管理が徹底されている。大きな卸売業者がテナントで参入し、中小卸が買い付ける。一般客は参加できず、一部例外を除いては農家が直接搬入することも出来ない。

s-IMG_1402この市場での取引は競り売りではなく、国管理の価格統制委員会が決定する価格帯で売り買いされていて、ほとんどが常連となっているようだ。
232haの広さに圧倒されながら調査し、その食材の多さに驚いた。
フランス料理は世界的にも確立されているが、食に対する意識の高い国民性もあると感じました。
フランス人の食を満足させる食材の宝庫である。

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